陸上自衛隊のヘリパイロットになるための課程(FEC)とは

Twitterで、「陸上自衛隊のヘリコプターパイロットになるにはどうしたら良いのですか?」とご質問を頂きました。

空飛ぶたぬきは空自専門ということで、実際に陸自で活躍されたヘリパイさんにインタビュー


空たぬ 「陸上自衛隊のヘリコプターパイロットになるためには、陸曹航空操縦課程に入校すると伺いました。一般では受験できない課程ですが、どのような試験で選抜されるのでしょうか。」

うーん、すいません。ずいぶん昔の事なので詳しくは覚えてないですね。(;一_一)

でも、基本的に航空学生と同じような内容で、マークシート方式だったと思います。実機を操縦しての試験はありません。

私の記憶では、 一次試験: 一般教養、部内科目(自衛隊内の規則や装備に関する事項) 二次試験: 飛行適正検査(筆記)、航空身体検査(脳波検査は後日、自衛隊病院にて実施)、体力検定、面接(飛行適正検査、航空身体検査、体力検定をクリアした者のみ後日実施) だったと思います。

二次試験は2日か3日かけて行われ、毎朝合格者が発表され、不合格者はその段階で試験終了で帰ります。ですので、実質は5次試験位まである感じです。

たしか、初日に飛行適正検査、2日目に航空身体検査、3日目に体力検定だったような気がします。後日、個別に自衛隊病院で脳波検査を受け、問題なければ、面接試験を行い試験は終了。あとは原隊で勤務をしながら結果待ちです。

私の場合、二次試験は朝霞駐屯地の外来隊舎へ宿泊だったのですが、日々人が減っていき、初日の飛行適正検査で半分、2日目の航空身体検査で更に半分位いなくなりました。 陸上自衛官なので、体力検定で落ちる人はいないと思います。

私は最終的に3回目で陸曹航空操縦学生(FEC)に合格したのですが、1度も一次試験で落ちたことはありませんでした。 18才で陸自に入隊してから、演習等で昼夜問わず体を酷使したり、様々な課程に入校して、徹夜続きで勉強したりする日々が続いたせいか、裸眼で1.5あった視力がどんどん落ちていき、最初の2回は二次試験の深視力で落ちてました。

陸自って聞くと、ただ体を使うだけで体力バカなイメージがあるかもしれませんが、どの職種に配属されても、専門知識が必要な為、想像以上に勉強が必要だったり、試験を受ける機会が多いんです。

空たぬ 「FECに入るための条件等はあるんですか。」

FECは、受験資格が3等陸曹になってから1年以上で、なおかつ27才以下という条件なので、部隊勤務で忙しい状態で受験することになります。 どの職種からでも受験出来るのですが、なるべく早く3等陸曹になる必要がありますし、それまでの数年間は様々な職種で普通に陸上自衛官として勤務することになりますので、その段階は0次試験といえるかもしれません。

操縦学生としてスタートラインに立つまでの段階で、数々の厳しさを乗り越える必要がありますし、本当にやる気がある者しか合格出来ない仕組みでもありますね。 ちなみに、航空学生もかなり棘の道だと思いますが、陸自のFECも負けない位厳しいと思います。

空たぬ 「操縦士という仕事はやはりどこに行っても同じですね(笑)」

フライト中は基本的に教官に怒鳴られていましたし、必要な時には手が出ます。 当たり所が悪いとヘルメットのバイザーが割れたり、時には流血したりも・・・。

2人1組のバディ制で、基本的に前段後段に分かれ、1フライト1時間~1時間半で交代するのですが、私が後段で交代時にバディが口から血を流しながら機体から降りてきた時は、正直操縦を交代したくなかったですね。(T_T)

ただ、勘違いしないで頂きたいのは、教官も決して嫌がらせや虐待をしている訳ではありませんし、決して好きで怒鳴ったり叩いたりしている訳ではありません。今時の若い方には理解出来ないかもしれませんが、一言で言えば、まさに愛の鞭なのです。

やはり空を飛ぶという事は自分だけでなく、地上の一般の方の命も掛かっていますし、本当に血の滲むような努力をしないと操縦技量を始め、判断力と決断力は向上しません。

また、何事も一切妥協しないという気持ち、どんなに苦しくても負けない、諦めないという気持ち、今後一生、操縦技量・判断力・決断力を向上させる努力を怠らないという気持ち等、メンタル面でも陸上自衛隊の操縦士として必要な資質を身に付けなければなりません。

ですので、教官も学生を育てる為に真剣に指導をする中で、そうせざるを得ない時があるのです。

ヘリはENGを始動しローターが回転してしまえば、ある意味固定翼機が巡航しているのと同じ状態です。メインローターだけでなくテールローターという凶器が高速回転していますし、少しでも操縦系統を動かせば即座に機体は反応します。

一瞬でも操縦桿から手を離したり、安全確認を怠ったり、管制指示を聞き間違ったり、というような危険行為を行った時は特に厳しい指導が入ります。

教官は敵ではありませんが、厳しいがゆえに同期やバディとは真剣に協力しあいますし、お互いに団結し協力し合わないと数々の壁を乗り越え、金色のウイングマークを胸に付ける事は出来ません。

空たぬ 「このあたりは空自も一緒ですね。同期や先輩、後輩との協力、絆を強く求められます。」

最終的には全国の陸上自衛官から、毎年40人程(当時)が選抜され、それが半分ずつ前期(1月入校)と後期(6月入校)に分かれ、陸曹航空操縦学生として航空学校宇都宮校へ入校します。

FECでは先輩後輩の関係になりますが、幹校では同期になります。

だいたいの隊員がFECに合格した段階で、パイロットになれると浮かれるのですが、入校してからとんでもない所に来てしまったと、後悔に近い感情になり、今一度甘かった考えを改め、気を引き締める事となります。

あと、FECは全国の陸上自衛官から選抜するため、陸自のパイロットは元普通科(歩兵)、元野戦特科(砲兵)、元高射特科(対空戦闘)、元機甲科(戦車乗り)、元施設科(工兵)、元航空科(航空機整備)、元通信科等、様々な職種の人がいるのが特徴ですね。

空たぬ 「多数の職種の方が集まるんですね。ほぼ全部と言っても良いかもしれないですね。言い換えればどの職種でもチャンスがあると。では、陸上自衛隊のパイロットを目指す上での心構えとかあれば。」

陸自のヘリパイを目指して入隊するのは動機としてまったく問題ありませんが、根底に陸上自衛官になるという心構えがないと務まりません。

防大及び一般幹候を除き、陸自だけは航空学生にあたる陸曹航空操縦学生を高卒の民間人から採用せず、あえて現役の陸上自衛官から選抜するという方法を取っています。

その一番の理由は、航空部隊は基本的に支援部隊であり、地上部隊の経験が無いと、地上部隊と円滑に連携し、適切に支援し任務遂行に寄与する事が出来ない為です。

地上部隊は非常に過酷な環境にあり、更に敵と接触すれば激烈な戦闘となります。エアボーンやヘリボーンで空輸される隊員にとって何が最適であり、何を望んでいるのかが分かっていないと役に立ちません。

地上で敵からの激しい攻撃を受けている者の心境を知っていれば、戦闘ヘリによる攻撃・支援がどれだけ重要であり、心強いものであるかが分かります。

対地攻撃に関しては、空自さんの支援も現場にとっては非常にありがたく、作戦成功の可否はもちろん、隊員の生死を分ける非常に重要なものですね。

要は、陸上自衛隊というのは、基本的に地上で敵と直接戦う隊員達が主役であり、航空部隊はそれを支援する部隊なのです。

陸自には様々な職種がありますが、それぞれがお互いに緊密に連携し、一丸となって1つの目標に邁進しなければ、任務を達成することは出来ないのです。

話はそれましたが、パイロットになってからも、当然ながら陸上自衛官であり、毎月のように演習もありますし、顔にドウランを塗り、体に草を付け、タコ壺を掘り、泥だらけになり、暑さに耐え、寒さに凍え、空腹に耐え、何日も風呂にも入れず、トイレは大自然(森の中)、不眠不休を克服しながら、作戦に基づいて出撃する事になります。

また、部隊間の連絡・調整や作戦の立案、訓練計画の作成等、様々な幹部としての仕事もしなければなりません。日々のデスクワークと共に体力練成等もこなさなければなりません。

階級の違いにより、整備・通信や他部隊の隊員等からはそれなりの接し方をされますが、空自さんのようにパイロットだからといって別格な扱いをされたりはしません。

飛行手当により、給料は同じ階級の隊員に比べてかなり良くなりますが、あくまで手当ですので、人事異動により搭乗配置から外れれば手当は支給されません。

搭乗配置についていても、目に見える違いは、食堂で航空加給食として、牛乳やバナナ等が付き、他の隊員より一品多い位です。

少なくともエアラインのように操縦だけしていれば良いという世界とは遥かにかけ離れています。

ただし、日本を守る為に国防にたずさわりたい方や、災害派遣、PKO等の国際貢献等、陸上自衛官としての任務が好きで、なおかつ飛ぶ事が好きならば、非常にやりがいがありますし、非常に高価で高性能な機体で飛ぶ事が出来、飛行手当により給料もそれなりに良く理想的な職業です。

空たぬ「なるほど、同じ操縦士とはいっても空自はやはり一部の特別扱い感じます。そういう意味では陸自さんでは「陸上自衛官の恒常業務+航空機操縦が加わる感じなんですね。今回はありがとうございました。」


いかがでしたでしょうか。

同じ操縦士という仕事であっても、やはり最後は実際の運用に即した操縦士でなければ勤まらない。

地上部隊と密接な関係を保ち、任務を遂行する陸上自衛隊操縦士はやはり厳しい世界の人たちなのでしょう。

ご協力いただいたJE様、ありがとうございました。

※ 本文は、陸上自衛隊にて実際にヘリコプターパイロットとして勤務された方の文面をアンケート風に再編集したものです。


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