パイロットライセンス(技能証明)のお話

「パイロットになるにはどんな免許が必要ですか?」

この質問は、私が空飛ぶたぬきを名乗る前から、たくさんの人に聞かれる言葉です。

パイロットライセンスの正式名称は、「技能証明」と言います。

この技能証明は一般に言われる免許と同じように、国家試験を受験して合格することにより初めて付与されるものです。

もちろん、自動車を運転する際に免許を携帯するのと同じように、「航空機の運航に携わる際は携帯する」必要があります。

でも、自動車の免許と異なる点が非常に多いため、わかりにくい。

今回は、この技能証明についてお話します。


 

技能証明の種類とは

技能証明は、「航空機の種類」ごとに決まっています。

「飛行機」、「回転翼航空機(ヘリコプター)」、「滑空機」、「飛行船」の4種類です。

つまり、飛行機の技能証明を持っているからといって、滑空機に乗れるとは限らないのです。

車の免許ですと、大型を持っていると普通に乗れるような、互換性はありません。

さらにややこしいことに、「航空機の等級」によっても区分されます。

主に離着陸する着陸帯の種類で、「陸上」と「水上」

発動機(エンジン)の数によって、「単発」と「多発」

さらに回転翼航空機の場合は、発動機の種類によって、「レシプロ」と「タービン」に分かれています。

つまり、単純に飛行機の免許といっても・・・

「飛行機陸上単発」、「飛行機陸上多発」、「飛行機水上単発」、「飛行機水上多発」と4つに分かれることになるのです。

これが回転翼航空機だと、発動機の種類もあるので全部で8つに分かれているのです。


 

エアラインパイロットの場合

エアラインに代表される中大型機はさらに区分があります。

通常、エアライン機は「操縦に二人を要する航空機」ですが、その中には、「型式限定」と言われる機種毎に必要な免許があるのです。

例えば、A320に乗るためには、「A320の型式限定」が必要になりますが、これを持っているからといってB767に乗れるわけではなく、新たに「B767の型式限定」が必要になると言うことです。

つまり、エアラインの場合は「飛行機陸上多発」+「型式限定」ということになります。

自動車で言えば、「クラウンは乗ることができても、カローラは乗れない。」、「トヨタ車には乗れるけど、日産車には乗れない。」という不思議な免許形態なのです。


 

パイロットの仕事によっても違いがある

すでにお話した、航空機の種類や等級、型式といった種類で制限されているのはもちろんのこと、パイロットとして何をするかということも、技能証明の区分に反映されています。

「パイロットとして何をするか。」ということを、「業務範囲」といいます。

業務範囲で技能証明を区分すると、自家用操縦士、事業用操縦士、定期運送用操縦士、准定期運送用操縦士の4種類に分かれます。

自家用操縦士

  • 「趣味やレジャーとして運航」する航空機で、機長として操縦ができますが、これは「報酬」や「対価」を受けることができないという意味です。
  • 誰かを乗せたり、荷物を運んだとしても、「報酬」や「対価」を受けることはできません。車で言うと第1種免許になります。

事業用操縦士

  • 自家用操縦士の業務範囲に加えて、「人や貨物を乗せて運航」する航空機の機長として、操縦ができます。
  • さらに「報酬」や「対価」を得ることができます。車で言うと第2種免許です。
  • また、次で説明する「日時や路線を定めて運航」する航空機の機長以外の操縦者としても乗務することができます。

定期運送用操縦士

  • 事業用操縦士の業務範囲に加えて、「日時や路線を定めて運航」する航空機の機長として、操縦ができます。
  • 「日時や路線を決めて」というのは簡単に言うと「時刻表」がある航空機の運航です。エアライン等がこれにあたります。

准定期運送用操縦士

  • 最近できた新しい技能証明です。これは「日時や路線を定めて運航」する航空機の機長以外の操縦者として乗務できる資格です。平たく言えばコパイとして乗務ができる技能証明ですが、注意が必要です。
  • この技能証明「は事業用や定期運送用とは異なり、下級の技能証明の業務範囲を含んでいません。つまり准定期をもっていても、事業用や自家用としての運航はできないという、ごく限られた技能証明といえます。

 

パイロットになるためにどの資格を取るのか

このように細かく分かれている技能証明ですが、パイロットになる上で考えるのは、「パイロットとしてどんな飛行をしたいのか。」を考えるのが最もわかりやすいです。

エアラインなら

  • 定期運送用操縦士か事業用操縦士、准定期運送用操縦士の3択です。
  • 機長になるには、定期運送用が必須ですが、これは当該機種の飛行経験等が必要になりますので、いきなり自力で取ることは不可能です。
  • また、准定期運送用は、航空会社に入社して決められた教育を受けないと取ることができません。
  • つまり、事業用操縦士だけが自力で取得できる唯一の資格ということになります。

自衛隊、警察、消防、ドクターヘリ、使用事業会社なら

  • 事業用操縦士になります。
  • もちろん、定期運送用でもいいのですが、いきなり取得できないのは前述の通りです。
  • 准定期運送用は、業務範囲を逸脱しますので、これも不可です。

趣味やレジャー

  • 自家用操縦士、事業用操縦士、定期運送用操縦士になります。
  • 上級の技能証明は取得するのが大変ですから、自家用操縦士で十分です。

このように見てくると、「事業用操縦士」を取得することが、仕事(プロパイロット)として最低限必要な資格であるということが分かると思います。


 

事業用操縦士を取得するぞ

無理ですwwww

技能証明を取得するには、飛行時間や経験など、必要な要件が決まっています。

これを、「技能証明の要件」といいますが、事業用操縦士の要件のひとつに、「飛行時間200時間以上(飛行機の場合)」となっています。

これは、なんでも良いからとりあえず200時間は飛行経験がないとダメということです。

「なんでも良いから飛べば良いじゃん。」と思うかもしれませんが、技能証明を持たない状態で飛行するには、「操縦教育証明」という飛行機の教官資格を持つ人と一緒に飛行しなければいけません。

もちろん、単独飛行の際は一人で飛行できますが、教官のチェックアウト(技量認定)に合格しないと単独飛行はできません。

常に教官と一緒ということは、教官に対する人件費が発生しますので、金銭的に超余裕がないとまず無理なんです。

さらに、「機長時間」という要件もあります。

事業用操縦士の要件で、「機長時間100時間(飛行機の場合)」です。これは前述の飛行時間に含めることができます。

技能証明を有していない人は、機長として飛行することはできません。

ここの解釈は大変難しいのですが、日本JCABですと、「単独飛行」という項目になります。米国FAAですと、「PIC(Pilot in Command):機長」という扱いになります。

この問題を解決するために、まず最初に、「自家用操縦士」を取得するのが一般的です。

自家用操縦士の要件は「飛行時間40時間以上(飛行機の場合)」です。

つまり、教官と一緒に飛ぶことも含めて、事業用の1/5の時間で技能証明が取得できます。

技能証明を取得した後は、一人で飛ぶことができますし、機長として飛行することもできるのです。

そして、必要な要件である飛行時間200時間を達成したら、「事業用操縦士」を受験すれば良いと言うことになります。

ただし、これらのことを考慮して、訓練計画を立てている学校等もありますので、いきなり事業用が絶対に無理という訳ではありません。


 

航空機の等級も考える必要がある

「航空機の等級」は、前述にあった「陸上・水上」、「単発・多発」、「レシプロ・タービン」のことです。

エアラインに就職を希望するなら、「陸上・多発」になりますが、「陸上」はともかくとして、「多発」にいきなりチャレンジというのは、かなり無謀です。

航空機の運航にかかる経費、言い換えれば練習生が払う航空機使用料を考えると、単発と多発では2倍、3倍といった差があります。

このため、最初から多発で訓練を行うのではなく、

  1. 単発で訓練を開始して、「自家用操縦士」を取得する。(飛行時間40時間)
  2. 単発で訓練して、「事業用操縦士」を取得する。(飛行時間200時間(自家用の40時間を含めてよい。))
  3. 多発で訓練して、「多発」へ限定変更する。(状況によっては事業用操縦士を多発で受けるプランもある。)

というのが一般的です。

こういった「等級の変更」のことを一般に「限定変更」と言います。

このように段階を経て、自分の希望する技能証明を取得するのが一般的ですが、これには長い年月や多額の費用がかかるのはもちろんです。

さらには自分自身のモチベーションを維持することがとても重要な事になってきます。


 

飛行時間は使い回しができる

飛行機の技能証明を持っている人が、滑空機の技能証明を取得する。といった場合には、異なる種類の航空機の飛行時間の一部を必要な要件に算入できる場合があります。

組み合わせは色々ありますので、詳細は割愛しますが、そういった制度を上手に活用すれば、高校や大学時代に飛行したグライダー等の飛行時間も無駄にはならないのです。

また、自家用操縦士から事業用操縦士にステップアップする際も、自家用操縦士で飛行した飛行時間は、事業用操縦士の飛行時間の要件に充てることができます。

このため、パイロットやパイロットになろうとする人は、「フライト・ログブック」と呼ばれる飛行時間記録帳を常に大切に持っているのです。


 

ライセンスを取得してパイロットを目指す方へ

「自分自身の目指す所をきちんと考えて、必要な資格を取ることができるのか。」

これを考えるのはもちろんですが、さらに一歩踏み込んで、「教育内容に無駄はないのか。」、「教育内容に足りない部分はないのか。」という、ふたつの目でみることが大事だと思っています。

「パイロットになれます。」

私はこの言葉が嫌いです。

何も知らない相手であるのをいいことに、エアラインなどほど遠い資格の取得のために何年間も高い学費を払った人もいます。

これを読む若い皆さんには、自分自身でしっかりとした知識をもって、見極めることを学んで欲しいと思っています。

空飛ぶたぬきがいつも思い、実行するために努力していることをお伝えしておきます。

「自ら得た正しい知識は、自らを助け、自分の未来を正しい方向へ導く」

 

※注意:今回は、「技能証明」のみに焦点を絞りましたので、その他に必要な、「無線従事者免許」、「航空身体検査証明」、エアライン就職に必要な「計器飛行証明」、航空機操縦技能証明以外の技能証明については割愛しております。

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