航空機の離陸後進路

Twitterでのご質問「エアライン機は離陸後どのタイミングで進路を修正するのですか?」

この質問は、横風離陸のお話途中からでしたので、恐らく離陸後の方位修正を言っているのかと思います。

実は、厳密に言うと、エアライン機の場合は離陸直後にはすでに進路は決まっているので、パイロットはその方位になるように操作しています。

今回は、離陸フェイズの浮揚後操作についての厳密なお話です。


離陸とは

「いや、そんな事、知ってるよw」と言われそうですが、パイロットの操作という点では厳密に規定されています。

パイロットが使用する操縦や操作に関するハンド・ブックは、チェック・リストと呼ばれていますが、ここには「Takeoff」というセクションがあります。

この「Takeoff」セクションには、概ね次のように書かれています。

離陸開始は、滑走路に進入後、浮揚する目的で地上滑走(加速)を開始する瞬間を「離陸を始めた瞬間」と定義できます。

離陸終了は、機種により違いはありますが、「安全高度到達後」や「脚やフラップを収納後(上昇用フラップ位置に変更後)」を離陸の終了点と定義しています。

今回の質問である、機首方位の修正とは、通常浮揚後操作ですので、離陸フェイズにおいて操作することになります。

離陸のフェイズ

離陸には3種類があります。

  • Standing Takeoff:滑走路に停止後、離陸出力にした後、ブレーキを離す
  • Semi Standing Takeoff:滑走路に停止後、中間出力でブレーキを離し、その後離陸出力にする
  • Rolling Takeoff:滑走路に進入後、停止することなく、離陸出力に進め離陸滑走を行う

いずれの場合でも、エンジン出力の最終確認は、「離陸出力で安定後」に行い、離陸滑走を行います。

その後は、滑走路中心線上を加速していき、機首上げ速度に達した後に操縦桿を引き、浮揚姿勢を確立させます。

浮揚速度に到達すると、航空機は自然に浮揚しますので、その後は必要な速度や高度に到達したことを確認後、脚やフラップを上げます。

さて、この一連の離陸操作の中で、機首方位はどのタイミングで合わせるのでしょうか。

離陸後の守るべき方位は2種類ある

実は、離陸後に守るべき機首方位というのは、二つの種類があります。

  1. 離陸滑走路の磁方位を維持して、上昇する方法
  2. 離陸後、滑走路の延長線上を飛行するように、機首方位を修正しつつ、上昇する方法

の2種類です。

離陸滑走路の磁方位を維持して、上昇する方法

これは、計器飛行方式(IFR)による飛行を行う航空機の方法です。

計器飛行方式は、離陸後の進路や経路、上昇方式についても全てあらかじめ規定されており、その通りに飛行することが義務付けられています。

ですので、滑走路を離れた瞬間に、その飛行方位はきまっているため、「風に流される状態」で飛行しているのです。

例えば、滑走路方位が360度(北)の滑走路を離陸した場合、浮揚後にパイロットが保持すべき機首方位は360度であり、横風を受けて流れてしまっても構わないことになります。

となると、実際の航跡は滑走路の延長線から風下側にずれることになります。

※ ただし、離陸後進路が航法用無線施設等のラジアル(放射状の線上)等で指定されている場合は、その線上を飛行する必要があり、この場合は風に対する修正が必要です。

離陸後、滑走路の延長線上を飛行するように、機首方位を修正しつつ、上昇する方法

これは、有視界飛行方式(VFR)による飛行を行う航空機の方法です。

有視界飛行方式は、飛行後の進路や高度についてはパイロットが任意に設定ができます。言い換えると「自由に飛行する」ことができます。

ただし、それは安全高度(一般的には対地高度500ft)に到達後ですので、安全高度までは、「滑走路の延長線上を飛行」する必要があります。

このため、浮揚後は、滑走路の延長線上を飛行できるように、風に対する修正を行う必要があり、浮揚後直ちに修正操作が必要と言うことになります。

※ ただし、飛行方式によらず、浮揚後の経路や飛行経路を指定されている飛行場もあり、その場合は決められた経路を守るように飛行する必要があります。

簡単に言えば、計器飛行方式では、「滑走路方位を維持して上昇」、有視界飛行方式では、「滑走路の延長線上を維持して上昇」と言えます。

なぜ2種類あるのか

計器飛行方式は、計器気象状態(IMC)下でも飛行が可能です。

空港によっては、水平視程がほとんどない状態や、浮揚後すぐに雲に入るような状態でも飛行できるのです。

すなわち、浮揚直後に、「外景を見ることが出来ない気象状態」である可能性があります。

言い換えると、「浮揚直後から計器だけを見て飛行」しなければならないので、「滑走路の延長線上」を維持するのが非常に困難なのです。

計器の指示だけをもとに飛行しますので、風下に流されるのは当然です。

このため、計器飛行方式で設定されている出発経路は、風に流される分まで考慮してあり、経路上の安全高度や幅(バッファー)が設定されています。

逆に有視界飛行方式は、有視界気象状態(VMC)でなければ行えません。

つまりは天気が良い状態ですので、「外を見て飛行」することになりますから、滑走路の延長線上を飛行できることになります。

離陸後の機首方位修正

このように2種類の浮揚後進路がありますので、質問に対する回答は次のようになります。

  • エアライン(計器飛行方式)機は、浮揚後の風による偏位を修正する操作はない。
  • 有視界飛行方式で飛行している航空機は、浮揚後ただちに滑走路延長線上を飛行できるように修正が必要である。

ただし、※印でもかきましたが、離陸後の経路を「方位」で記載している飛行場と、「航路」で記載している飛行場がありますので、注意が必要です。

また、最近はGNSS航法(GPSを使用した航法)があり、滑走路延長線上を飛行できる環境になり、安全面から「流されっぱなし」で飛行する航空機は少ない(またはない)と言われています。

風に対する修正とは

全ての航空機に共通することは、「流された状態で飛行する状況」というのは、非常に少ないと言うことです。

例えば、航空路を飛行する場合は、出発地と目的地を結んだ直線上をずれないように飛行する事が求められていますので、必ず風に対する修正を行う必要があります。

実際に計器飛行方式で飛行している際に、1nmでもずれて飛行していると、「Are you Request Deviation Flight ?(経路上を意図的にずれて飛行しますか?)」と聞かれます。

それくらい厳密なものなのです。

この違いを理解し、操縦技術に反映させるために、技能証明(ライセンス)試験では、風に対する飛行方法を2種類を行い、確認されます。

  • ホーミング:目的の無線航法施設に対して、常に機首方位を正面に保持し続ける方法
  • トラッキング:目的の無線航法施設からのラジアル(放射状の線上)を維持する方法

ホーミングは、常に無線施設に対して機首を向けますので、風に流され続け、最後は風下から無線施設に到達します。もちろん経路は長く、時間もかかります。

トラッキングは、風に対する修正を常に行い、経路が一定となりますので、時間も経路も最短になります。

基本的に、航空機の飛行はトラッキングになりますので、言い換えれば「常に風に対する修正を行う」飛行が理想といえます。

浮揚後操作として書きましたが

実際に離陸操作を行うと、離陸のための地上滑走から、風に対する修正技術が要求されます。

  1. 滑走直後:低速における修正
  2. 滑走開始から加速:高速に変化する過程での修正
  3. 機首を上げた状態:主な方向保持装置である前輪が地面から離れた瞬間
  4. 主車輪が離れた直後:主脚が地面から離れ、主脚による直進性が失われる瞬間

の4段階全てにおいて、風に対する修正操作が必要です。

パイロットは、計器はもちろんのこと、機体が流される感覚や目に見える滑走路に対する位置を判断して、適切な横風対策を講じ、安全な離陸を行っています。


横風に対する修正は、毎回計算でだしているのですか?という質問も受けます。

実際は、短時間の飛行で経路のずれを考慮して、修正を続けています。

大型エアライン機では、横風成分が数値ででますので、計算で修正量を算出できますが、実際は目で見た経路と自らの感覚に頼る部分も大きいのです。

常に機体の航跡に気を遣っている。とも言えますね。

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